8.ありがちなこと
3D-CADの導入時にありがちなこと(うまくいかない原因と言っても良い)を書いておきたい。
・どこの設計者もいつも忙しいので、操作習得(教育)がなかなか進まない。特に管理職以上のベテラン設計者に対して操作教育を実施するのは本当に難しい。今でさえ残業続きで手一杯なのに、これ以上いったい何をやれというの?と言われる。
・開発設計業務の常として、完全にすべてを新規に設計することは稀で、従来品の一部変更設計が多い。新しく設計するテーマから3Dにしようと言っても、従来からある部品の図面を3D化しておかないと仕事が進められないので、従来品の3D化は外部に委託するか、操作に慣れたCADオペレータに前もってやってもらうということになる。
・ところが、この作業を外部やCADオペレータに任せてしまうと、彼らは当然できるだけ短い時間で3Dモデルを作ろうとするので、形にはなっていても後からそれを少し変更して別の部品にしたいときに非常に変更しにくいモデルの作り方をされる場合がある。また、設計者がやっている場合でも、従来の2Dの考え方が抜けないために、例えば断面をそっくりスケッチにして、それを押し出し(あるいは回転)して作ってしまうようなことも多い。そんな作り方を推奨する(実際の設計経験のない)講師もまた多い。
・設計者はとりあえず慣れた2D-CADで設計を行い、その図面をCADオペレータが3D化するという流れができてしまう。
・これが少し続くと、社内プレゼンなどでは綺麗な3D設計の絵が出てくるので、外見的には3D設計が進んでいるように見えるが、実際にはまったく中身が伴わない3D化となる。3D設計のいちばん大きなメリットである「設計初期段階からの3Dモデルによる検討」や「BOMと3Dデータとの連携」ができない。
・制御ソフトウェアも含めたいわゆる「モデルベース開発」のような大げさなものでなくても、単に重量や重心位置、動きがあるものなら慣性力や共振点の検討、生産現場の人も含めたわかりやすいデザインレビューなどのようなことだけでも、3Dの大きな価値があるはずだが、これらのことが実施できるのは開発のずっと後の段階となってしまう。下手をすると現物ができてしまって不具合が明らかになってからの後追い確認のためだけに使っているような羽目になる。
・また、設計部品表(E-BOM)への展開は2D-CADで使用されていたシステムがそのまま続いていくことになるので、この辺りの改革、工数削減も進まない。
・極端な場合には、製作用の図面は従来通りすべて2Dで出図し、部品表も図面を見ながら手入力、プレゼン用だけのために3Dモデルを作っているような例も実際に見たことがある。
この状態が続くと、本来の姿に戻すために長い時間がかかるばかりでなく、結局3Dは効果が出ないね・・みたいなことになってしまう。